なんか最近レックス、やけに立派な斧持ってるよね？
鉄の斧ひとつありゃ敵なんて蹴散らせるって言ってたのに。
ヴェルダン城に陣取るサンディマ司祭は闇魔法の使い手と言うことで、
危ないからってシグルド公子に付き従う一部の者以外は
マーファ城にて待機命令が出てたろ？
俺はそんときにこっそり抜け出してヴェルダン湖の湖畔に出かけていたのさ。
ヴェルダン軍はあらかた始末されていたから
敵の攻撃の心配も無かったわけがそこは念のため、
愛用の鉄の斧は持って行ったわけだ。
神秘的な場所だったんだ。
湖面にはミズバショウって言うのかね、綺麗な花が浮かんでてさ、
俺は馬から降りて切り株に腰かけようと思ったんだが…、
すぐに拾おうと思ったのだが、思いのほか深さがありそうだ。
武器を落としてしまい途方にくれていたんだが、
突然、湖面からモクモクと煙が湧きあがって、
モヤが晴れるとそこには輝く斧を持った綺麗な女性が立っていたんだ。
「あなたが落としたのはこの金の斧ですか？」と問われたが、
俺は「違う」と言った。すると女性は
「ではこちらの銀の斧ですか？」と言ってくる。
俺は「そんな立派な斧じゃない、ただの鉄の斧だ」と答えた。
するとだ、にっこりと笑みを浮かべて
「あなたは正直な方ですね、この勇者の斧を差し上げますわ。」
と言ったかと思うとスゥーッと姿が消えて、
そこには勇者の斧が残っていた、ってワケさ。
あれはもう、あの湖の女神様だとしか思えねえよな。
レックスがそんなロマンチックで面白い話をするなんて
初めてじゃないかなあと思ってさ。
大きな声なんて張り上げて？
湖の女神に出会って立派な斧をもらったなんて言ってるんですよ。
意外だな、君がそんなジョークを言って場を和ませてくれるとはな。
ふふ…、は、ははははは！
俺はすっかりこの軍で道化扱いされてるよ…。